ぽんた


古くからの悪友M氏の愛猫ぽんたが、天に召された。
10歳くらいだったはず。
M夫人の言葉によると寿命だったのだろう、と。



ぽんたは、Mの実家で保護した。
外出中のご両親に替わって庭の水やりに寄ったときだった。
たまたま一緒だった私は、帰り際に子猫の声がしたように思い、Mに伝えて様子を見た。
はじめは見つからず、気のせいかと出発しようとしたらやっぱり聞こえる。
もう一度、裏の物置の方まで行ってみた。

いた。

捕まえようとすると逃げるので仕方なく、親猫が連れに来だろう、と門の方へむかった。


そうしたら。


走ってきたのだ、ぽんたが。
ちっこい体で、一生懸命。ぱたぱたぱたぱた。
ぴーぴー鳴きながら。

良かった良かった、と安心するもまだ奥の方で声が聞こえる。

果たして。

いた、もう一匹。
真っ黒の子猫。

その子はさらに小さくて声も貧弱だった。
無事、保護。


Mのアパートは本来動物禁止だったが、考えた末に飼うことにした。
かくして彼らは、ミスタードーナツの空き箱に入ってMのうちにやってきた。


ぽんたは元気が良くてぽんぽんはねまわる子だった。
手足ががっしりしてでっかくなりそうだと予想していたら、やっぱりでかくて。でも気は優しくてくりくりっとした目がかわいかった。
柄は白黒パト柄。

もう一匹はちっこいくせにフーフー怒っているので、ふー、という名前になった。


Mは、ぽんたとふーをよぶとき、
ぽんたっ!ふ〜ちゃあ〜ん、と雄と雌で呼ぶ声が変わっていた。
無意識にやっているから可笑しくもあり、またMのネコたちへの愛情を感じとても好ましかった。


彼に嫁さんがきてネコがもう一匹増え、新しい家でみんなで楽しく暮らしていたはずだ。
ぽんたはM家で暮らした十余年、幸せだったと信じている。